東洋文庫252 平凡社
『海游録』 朝鮮通信使の日本紀行 申 維翰・著 姜 在彦・訳注
海 游 録 江戸時代第九次(享保四年)朝鮮通信使の記録
作成年(西暦) | 1719年 |
年号 | 享保四年 |
文章カテゴリ | 江戸時代第九次(享保四年)朝鮮通信使の記録 |
執筆者 | 申 維翰・著 姜 在彦・訳注 |
宛先 | |
備考 | 東洋文庫252 平凡社 |
一三六頁より
@@@竿には盆の如き燈を懸け、そのなかに燭を点じて晃朗螢耀、かくの如きが五歩ごとに一対となっている。夜が昼の如く明るい。
@このとき使行は実相寺に入った。改めるべき服が、遅々として届かない。余に従う童子と従僕は後ろにあり、乗馬してやや間をおく。余は、ひとり、六、七人の倭人とともに街を通り抜けた。見物する男女の綿繍の服は、眼にきらびやかなこと大阪よりも倍蓰(倍も五倍も)する。路の左方には二層楼があり、縹緲として半空に聳えたつ。名を東寺という。
@東寺を過ぎると、層楼、宝閣が金銀色にきらめくもの、いちいち記録するにたえず。神が疲れ眼が熱くなって、いくつの町を通過したかも知らない。月色と燈光とが、上下にあって涯がない。宵に行くこと数十里、千万の奇観を閲するに、みな、かつてこの世間の経たるものにあらず、怳惚として、あたかも、琪花(仙境にあるという美しい花)叢裡に蓬莱白金仙閣(神仙が居るという海島の宮闕)を見るような気がする。
2012.07.23 住職筆
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